シルクロードの神々とほとけとその物語
シルクロードは古代の交易路であり、様々な宗教や神話が交わっていました。この道は東西の文化や宗教が交流し、神話の神々が出会い、そして融合しました。仏教、ヒンドゥー教、ゾロアスター教、キルスト教など、様々な宗教がシルクロードを通じて広まり、神話の神々も異なる信仰の中で新たな姿を見せていきました。ゆえに、シルクロードは異なる信仰や神話が交わる場所として、文化の交流と融合を象徴する存在と言えるでしょう。
本展では、シルクロードにおける神々と仏の姿を描いた数々の作品を、
1:古代エジプト・メソポタミアの神々
2:ガンダーラと仏教の神々と仏
3:インド神話とインダスの地母神
4:コインに描かれた神々 - ギリシャ神話とゾロアスター教の神々を中心に
の5つのテーマに分けて展示いたします。全作品、シルクロード美術史家 元金沢大学教授 文学博士 田辺勝美先生の完全解説とともにお楽しみいただけます。
女神/王妃
前3~後1世紀 エジプト
エジプトの神殿ないし墓の壁をかざていたレンガ(前3~後1世紀)で、二つの象形文字銘の間に女性の上半身が残っている。銘には太陽神ラーや天地の神の名称が刻まれているが、この女性との関係は不明。頭部と身体を側面観、眼だけは正面観で表す、古代エジプトの慣習的手法で浅浮彫りされている。女神であるのか王妃(女王)であるのかわからない。
粘土釘
前1837-1834年 イラク 古バビロニア時代
イラクの古バビロニア時代、ザンビヤ王(前1837-1834年)がイシン市に都城を建設したことや神々へ讃歌と献身を記した楔形文字銘が刻まれている円錐形粘土釘で、建物の壁に打ち込んだものである。メソポタミアの神々の数は2000~3000であるが、その数の中には主たる大神とマイナーな私的な小神が含まれている。ここでは以下の大神のみ挙げる
イシュタル女神:豊穣、愛。戦の女神
イナンナ女神:豊穣、愛、売春、戦の女神でイシュタル女神と習合
エンリル神:風神、大気、大地、嵐の神で、全ての神々の首領
ニシンナ(ニンシアンナ)女神:金星
地母神像
前1000年頃 イラン、ギラーン州出土
女性をかたどった形象土器で、内部は中空である。頭部は簡素な造形で、細い両腕と小さな乳房に対して太い首、豊かな腰と下半身は、大地の豊穣や女性の多産を象徴している。当時の生身の女性の姿をモデルとして、人間の女とはやや異なる姿の女神象を創造した。